前回の記事では、競技特性とパフォーマンス向上のポイントについて解説しました。
まだ読んでいない方は、こちらをご覧ください。

今回は、「跳躍の高さ」にフォーカスし、物理学的視点と身体機能の観点から、効率的に跳躍高を向上させる方法を解説します。
最大跳躍高を上げるために必要な要素とは?
トランポリン競技における跳躍高は採点に直接影響するため、性別・年齢を問わず、必須の能力です。 しかし、闇雲に努力を続けても効果が出にくいこともあります。
そこで、まず「なぜ高く跳べるのか?」という基本原理を理解し、自分自身の課題を明確にすることが重要です。
物理学の視点から跳躍高を考える
トランポリンで高く跳ぶには、エネルギーのロスを最小限に抑え、効率的に反発力を利用することが重要です。
スーパーボールの原理とトランポリンの共通点
トランポリンで高く跳ぶには、エネルギーのロスを最小限に抑え、効率的に反発力を利用することが重要です。
スーパーボールを高い位置から落とすと、
《落下時》
位置エネルギー(高さ) → 運動エネルギー(スピード)に変換
《地面衝突時》
運動エネルギー → 弾性エネルギー(圧縮による蓄積)に変換
《跳ね返る時》
弾性エネルギー → 運動エネルギー → 位置エネルギーに変換
このとき、ボールの弾性が高く、変形が少ないほどエネルギーロスが少なく、高く跳ねることができます。
トランポリン競技でも同じ原理が働きます。
高く跳ぶために必要なこと
✔ 着地時に体を適度に硬くする → 余分なエネルギーロスを防ぐ
✔ 反発時に適切な姿勢を取る → 運動エネルギーを最大限活用
体幹が緩んでいると、エネルギーが熱や無駄な動きに変換されてしまい、高く跳べません。

跳躍高にかかわる主要な筋群について
物理学的な原理を理解した上で、実際にパフォーマンスを向上させるために必要な筋肉について解説します。
1. 大殿筋(股関節伸展)
役割:股関節の伸展を促し、踏切時の出力を強化する
- 股関節伸展の主動作筋であり、跳躍時に大きなパワーを発揮する。
- Dyas et al. (2023) の研究では、トランポリン選手の跳躍高には カウンタームーブメントジャンプ (CMJ) の最大筋力 (F0) が強く関与する とされている。
- ハムストリングスと協働し、股関節の伸展を加速させる。
2. 背筋群(体幹安定性)
役割:空中でのバランスを保ち、エネルギー伝達を効率化する
- 背筋力はトランポリン選手の体力指標として極めて重要。
- 馬場 (2021) の研究では、大学女子トランポリン選手の背筋力指数(背筋力 / 体重)は 2.1、男子選手では 2.9 という高い値を示した。
- これは、他の競技スポーツ選手と比較しても最も高いレベルであり、トランポリン競技では 体幹の強さが跳躍高と密接に関連している ことを示唆する。

まとめ
トランポリン競技で高く跳ぶためには、
✔ エネルギーのロスを抑え、反発力を最大限活用することが重要
✔ 股関節伸展力(大殿筋)と体幹安定性(背筋群)の強化が鍵
✔ 女性は体重の2.1倍、男性は体重の2.9倍の背筋力が必要(馬場, 2021)
これらの要素を意識しながらトレーニングを行うことで、より効率的に跳躍高を向上させることができます。
次回は、具体的なトレーニング方法を解説します!
➡ 爆発的パワーを鍛えるトレーニング(股関節・膝関節の伸展力向上)
➡ 空中姿勢を安定させるトレーニング(体幹強化・背筋群の強化)
参考文献
- Dyas N, Green D, Thomas K, Matthew E, Howatson G. The physical determinants of maximal jumping time of flight in elite trampolining. Eur J Sport Sci. 2023 Dec;23(12):2283-2290.
- 馬場崇豪(2021).「大学女子トランポリン選手の体力について」九州国際大学国際・経済論集, 第7号(2021年3月)
- 馬場崇豪(2020b).「大学男子トランポリン選手の体力特性」東海学院大学研究年報 5, 9-16.
コメント