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【トランポリン×理学療法士】第二回:跳躍高向上のポイント

前回の記事では、競技特性とパフォーマンス向上のポイントについて解説しました。 
まだ読んでいない方は、こちらをご覧ください。

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今回は、「跳躍の高さ」にフォーカスし、物理学的視点と身体機能の観点から、効率的に跳躍高を向上させる方法を解説します。

目次

最大跳躍高を上げるために必要な要素とは?

トランポリン競技における跳躍高は採点に直接影響するため、性別・年齢を問わず、必須の能力です。 しかし、闇雲に努力を続けても効果が出にくいこともあります。

そこで、まず「なぜ高く跳べるのか?」という基本原理を理解し、自分自身の課題を明確にすることが重要です。

物理学の視点から跳躍高を考える

トランポリンで高く跳ぶには、エネルギーのロスを最小限に抑え、効率的に反発力を利用することが重要です。

スーパーボールの原理とトランポリンの共通点

トランポリンで高く跳ぶには、エネルギーのロスを最小限に抑え、効率的に反発力を利用することが重要です。


スーパーボールを高い位置から落とすと、

《落下時》
 位置エネルギー(高さ) → 運動エネルギー(スピード)に変換

《地面衝突時》
 運動エネルギー → 弾性エネルギー(圧縮による蓄積)に変換

《跳ね返る時》
 弾性エネルギー → 運動エネルギー → 位置エネルギーに変換

このとき、ボールの弾性が高く、変形が少ないほどエネルギーロスが少なく、高く跳ねることができます。

トランポリン競技でも同じ原理が働きます。

高く跳ぶために必要なこと

✔ 着地時に体を適度に硬くする → 余分なエネルギーロスを防ぐ

✔ 反発時に適切な姿勢を取る → 運動エネルギーを最大限活用

体幹が緩んでいると、エネルギーが熱や無駄な動きに変換されてしまい、高く跳べません。

https://www.kodomonokagaku.com/read/hatena/5251/より引用

跳躍高にかかわる主要な筋群について

物理学的な原理を理解した上で、実際にパフォーマンスを向上させるために必要な筋肉について解説します。

1. 大殿筋(股関節伸展)

役割:股関節の伸展を促し、踏切時の出力を強化する

  • 股関節伸展の主動作筋であり、跳躍時に大きなパワーを発揮する。
  • Dyas et al. (2023) の研究では、トランポリン選手の跳躍高には カウンタームーブメントジャンプ (CMJ) の最大筋力 (F0) が強く関与する とされている。
  • ハムストリングスと協働し、股関節の伸展を加速させる。

2. 背筋群(体幹安定性)

役割:空中でのバランスを保ち、エネルギー伝達を効率化する

  • 背筋力はトランポリン選手の体力指標として極めて重要
  • 馬場 (2021) の研究では、大学女子トランポリン選手の背筋力指数(背筋力 / 体重)は 2.1、男子選手では 2.9 という高い値を示した。
  • これは、他の競技スポーツ選手と比較しても最も高いレベルであり、トランポリン競技では 体幹の強さが跳躍高と密接に関連している ことを示唆する。

まとめ

トランポリン競技で高く跳ぶためには、

✔ エネルギーのロスを抑え、反発力を最大限活用することが重要 

✔ 股関節伸展力(大殿筋)と体幹安定性(背筋群)の強化が鍵 

✔ 女性は体重の2.1倍、男性は体重の2.9倍の背筋力が必要(馬場, 2021)

これらの要素を意識しながらトレーニングを行うことで、より効率的に跳躍高を向上させることができます。

次回は、具体的なトレーニング方法を解説します! 
➡ 爆発的パワーを鍛えるトレーニング(股関節・膝関節の伸展力向上)
➡ 空中姿勢を安定させるトレーニング(体幹強化・背筋群の強化)

参考文献

  • Dyas N, Green D, Thomas K, Matthew E, Howatson G. The physical determinants of maximal jumping time of flight in elite trampolining. Eur J Sport Sci. 2023 Dec;23(12):2283-2290.
  • 馬場崇豪(2021).「大学女子トランポリン選手の体力について」九州国際大学国際・経済論集, 第7号(2021年3月)
  • 馬場崇豪(2020b).「大学男子トランポリン選手の体力特性」東海学院大学研究年報 5, 9-16.


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